【お菓子史】「ポーニュ」~田舎で見つけたフランスの伝統菓子~
- 2018/05/07
- お菓子史
“ドローム県の市場で売られるポーニュとブリオッシュサンジェニー 引用:wiki”
Bonjour à tous !
遂に先日、住み慣れたリヨンを離れ、パリに越して来たほーしーです。
この街に住みながらも、心と興味は歴史や地方、古き良きものに向いているので、お菓子史に繋がる沢山の新しい学びや出会いをしていきたいと思います!
さてさて先日、リヨン生活最後の思い出として、Drôme ドローム県にある “Palais Idéal du Facteur Ceval = シュヴァルの理想宮 ” に行ってきました。(公式サイト:facteurcheval.com)
この理想宮とは、その昔一人の郵便配達人をしていたシュヴァルさんと言うおじさん(当時40歳過ぎ)が33年もの長い歳月をかけてたった一人で建てたお城で、その素材も仕事の傍に道端で見つけた石ころや貝殻など。決して建築の専門的知識があった訳でもなく、配達物の中にあった雑誌やハガキの写真かインスピレーションを得て、世界各地の建築様式を彼なりに再現したその姿はまるで生きているお城のようで、沢山感じるもの、考えさせられるものがありました。
実際にこの理想宮は、パブロ・ピカソやポール・エリュアール、アンドレ・ブルトンなど、多くの現代芸術家や詩人、思想家らから称賛され影響を与え、建設から何十年も後ではありますがフランスの文化財にも登録されています。少し交通の不便な場所にありますが、是非一度行ってもらいたい、オススメの場所です!リヨンからはTERとバスを乗り継いでも行けますが、乗り継ぎと往復の時間を考えるとかなり早朝に出発しなけれ当日中に帰って来れません。なので可能であれば、片道1時間20分程なので車で行くことをオススメします。私は運良く車を出してくれる友達を見つけました!ありがとう、オリビエ\(^^)/!!
そして旅先で忘れては行けないのが郷土菓子探しです!日曜であったのにも関わらず空いているブーランジュリーを見つけました。その看板の形にもなっていたこちらのパン。
「Pognes ポーニュ」
このドフィネ地方ドローム県ロマンという町が起源らしく、オレンジの花の香りをつけた、ほんのり甘いドーナツ型のブリオッシュです。リヨンでは一度も見た事がなかったので、これは早速食べみなくては!と思ったのですが、写真では分かりにくいですが直径30センチほどもある巨大なパン…もっと小さいサイズは無いんですか?と聞くと、カット売りもできるとのことで一切れ購入。ブリオッシュというにはバターと卵が少ないような素朴なモチっとしたパンで、味よりも香りを甘く感じました。そしてこのオレンジの花の香りは、南仏のお菓子やパンによく見られる特徴で、あー、リヨンよりも南に来たんだなぁとも思わされる瞬間でもありました。
さてこのポーニュ、今でこそお店の看板にされるほど年中買えるドロームのスペシャリテですが、14世紀初頭に誕生したばかりの頃はパック(キリスト教の復活祭)の時のみに食べる為に作られていた様です。今でこそ厳格に守っている人はほとんどいませんが、本来パックの前46日間は “四旬節” と言い、キリスト教の慣習では肉や卵などを食べるのをやめ、食事は一日一食、軽い断食の期間でした。(十字架に磔になったイエスと困難を分かち合う為。)なのでこれが明けるパックには、卵を使ったリッチなパンを食べて祝おうと作られたのがポーニュの始まりだった様です。お菓子の歴史の中で卵の収穫量が増えたのも丁度中世で、この時代には卵は珍しいものではなくなっていた事も理由の一つなのは間違いありません。
そして名前の由来についてですが、ポーニュの正式名称は「Pogne de Romans」ポーニュ ・ド・ロマンと言い、Pogneはこぶしや一握りと言う意味で、日仏商事さんのホームページでは“一掴み”の小麦が語源だと紹介されていました。
またロマンという町が発祥とされていますが、今では南仏の至るところで買うことができ、サイズはいつも大きめ30センチほど。アヴィニョン出身のオリビエも、週末に買って家族で食べていたと教えてくれました。
大きなパンは家族団欒の証!
今回もまた、素朴ながら温かみのあるお菓子(パンですが、私はお菓子の前身だと考えています!)に巡り会えて幸せでした!
それではまた新しい出会いを求めて…
À bientôt ;)!!!
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