【お菓子史】「クレメ・ダンジュ」〜フランス菓子と神々のご馳走
- 2018/01/24
- お菓子史
Bonjour à tous !!
あれよあれよと言う間に1月も終盤!
こんにちは、お菓子史ほーしーです。
さて、話は少し遡りますが、私の滞在している街リヨンでは12月の初めに光の祭典と言う大きなイベントがあり、各家庭の窓際にはロウソクの火が灯され、街中がライトアップされたうえに、至る所で音楽と映像のプロジェクションマッピングが繰り広げられました。年々観光客を多く迎えるこの一大行事に、レストランはパティスリーよりも早めに繁忙期ピークを迎えていました。
“光の祭典、ベルクール広場の様子”
さて、そんなこんなのドタバタで、新デセールのアイデアを職場で話し合っていた時のことです。
私:「クレメ・ダンジュなんてどうかな?フリュイルージュとビスキュイピスターシュなんかを合わせれば、クリスマスカラーになるし、シンプルだけどトラディショネルだよ。」
シェフパティシエ:「それは良いアイデアだ!
…ところで、そのクレメ・ダンジュと言うのはなんなんだい?」
私:「え!!! クレメ・ダンジュを知らないの?!」
はい。驚くべきことに、他のフランス人に聞いてもクレメ・ダンジュを知らない人の多いこと…料理関係者であってもです。
個人的には日本において、クレメ・ダンジュはティラミスに次いで浸透しているお菓子、という認識だったのでショックでした。
ではこのクレメダンジュ、改めてどんなものかと説明すると、フロマージュブランをベースに、メレンゲや生クリームを合わせたムース状のクリームを、ガーゼをしいた穴のあいた専用の型で水切りをして、好みでフルーツのソースなどを添えて頂くお菓子です。
フランス語では「Crémet d’Anjou」と書き、意味はアンジュー地方のクリームです。日本では良く、発音の似ている 「ange」=天使、と間違われ、天使のクリームなどと言われますが、白くて柔らかい食感からその様にイメージされるのも容易く理解できます。
イメージ戦略から、わざと「天使のクリーム」として売り出しているパティスリーも。
“セバスチャンブイエのクレメダンジュ、パイナップルのコンポート入り”
どうしてこのお菓子がフランス社会で忘れられかけているのか。はたまたそもそも、地方菓子の為にさほど広がっていないのか。
お菓子の歴史を遡ると、今はその起源もはっきりいつか分からないほど古いものです。まだ冷蔵庫もなかった時代に、アンジュー地方で保存していた生クリームから偶発的にできた食べ物と聞いています。少し発酵した、酸味の効いたクリーム、水分が抜けて、ヨーグルトの様に固まっていたのを食べたところ美味しかったと言うのが始まりだそうです。実際にアンジュー地方に行った事はないのですが、現地では、パティスリーよりもフロマージュリー、チーズ屋さんに置いてある事の方が多いそうで、またアンジュー地方のアンジェ出身の美食家、キュルノンスキーはこれを「神々のご馳走」と呼んだとも言われています。
確かに、現代の華々しいフランス菓子の中ではシンプルで控えめな存在になってしまったかもしれませんが、飽きの来ない優しい味わいは今でも充分に愛すべき存在であり、また多くのフランス人に知って欲しい、思い出して欲しいと思うのです。
そしていつか、実際にアンジュー地方に赴き、現地に伝わるクレメダンジュを試してみなければならないでしょう…
またこちらで報告できることを楽しみにしています!それでは、
À bientôt ;)!!
あらかじめ水切りしたクレームドゥーブルとフロマージュブランを使用した “クレメダンジュ、イチジクとポワールのアルマニャックマリネ入り”
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