【お菓子史】「劣悪な紅茶 ミルクティー」① 茶とフランス菓子
- 2017/03/17
- お菓子史
ご無沙汰しております!!
日常のバタバタで、すっかりサボりがちに…
重い腰をあげてなんとか一記事いってみましょう…!!
今回は少しお菓子から離れて、「紅茶」についてです。
皆さんはお菓子のお供には何を飲むでしょうか。
重厚でコクのあるバタークリームのお菓子には力強いコーヒを。
爽やかで繊細なムースのお菓子には華やかな紅茶を。
はたまた、濃厚なチョコレートケーキに更にカカオ感満点のショコラショーを合わせて楽しむというのも、某有名ショコラトリーのお勧めでもあります。
もちろん、一口にコーヒー、紅茶と言っても、その種類は様々でお菓子やその時々の気分に合わせると、その組み合わせは無限に考えられます。
コーヒーも紅茶も大好きな私ですが、(お茶をする、という行為そのものが好き)どちらかと言うと、私は紅茶派です。それも、しっかりと発酵された強めの、ミルクがよく会うお茶が好きです。
さて、今回はこの「紅茶」、特にミルクティーの小話を紹介したいと思います。
皆さん、ご存知かも知れませんが、
緑茶
烏龍茶
ほうじ茶
紅茶…etc
大体の〝茶〟と言う飲み物は、全て元は同じ植物、〝茶の木〟の葉です。
それが育つ場所や環境で、葉が大きくかったり小さかったり、品種の違いが生まれ、更にその収穫時期や製造方法(発酵や燻しなど)により様々なお茶が出来上がります。
茶の発祥は中国。その誕生については有史以前のこと諸説あり、長くなるのでまた別の機会に書くことにしますが、ヨーロッパにもたらされのは17世紀のこと。当時の貿易大国、オランダによって中国から伝えられたと言います。
その後1662年、現在の紅茶大国イギリスに、ポルトガルからキャサリン王妃が嫁ぎ、紅茶好きの彼女の贅沢なお茶会は一躍有名になり貴族社会を中心に大流行します。
その頃、貴族や文化人たちの社交の場として栄えていたコーヒーハウスというものがありました。いわば、酒の代わりに、コーヒーやチョコレートドリンクを出す〝バー〟。もしくはフランスの〝カフェ〟の様な場所で、そこで紅茶が出されはじめます。17世紀も中頃になると、このコーヒーハウスは一般人にも門戸を開き大衆化、紅茶は一般市民の間でも広く楽しまれる様になります。
17世紀後半から19世紀の初頭まで、イギリスの東インド貿易会社はお茶の輸入を独占することになりますが、このお茶の流行はイギリスの経済的発展の元になったとさえ言われています。
さて…今回のテーマであった「ミルクティー」ですが。
この飲み方を始めたのもイギリス人です。
今でこそ、スーパーでも安価で美味しい紅茶が買えますし、簡単にティーパックで淹れることもできます。紅茶愛好家の方には、やっぱり茶葉から淹れなくては!などと言われてしまうかも知れませんが、ティーパックでも上手に淹れれば、ヨーロッパに普及し始めた紅茶と比べると随分と美味しいものを頂くことができるでしょう。
と言うのも、ヨーロッパに入ってきたばかりのお茶は、紅茶と言うよりは、どちらかと言うと日本茶に近い発酵の浅いものでした。またこのお茶は発酵が浅いだけでなく、金に目の眩んだ商人たちによって劣悪な状態の物が多かったそうで、安価なものには不純物が混ざっていたりもしました。加えて、一般市民向けのティーサロンではお茶の淹れ方も雑であり、現在の様なゴールデンルールは存在せず、薄く不味いお茶を出していたりもしたそうです。
それでも人々は流行のお茶をありがたく頂き、ティーサロンに集う事を一つのステータスとしました。そのなかで、この劣悪な紅茶を少しでも美味しく飲もうとして生まれた飲み方が〝ミルクティー〟。大好きな紅茶の飲み方がまさかの驚きの誕生でした。
紅茶が今の様な色になったのは、長い貿易の過程で、消費者の好みに合わせて発酵を強めたからだとも言われます。また産業の発展と共に品質も安定、ヨーロッパのみならず、アジア各国やアメリカ大陸やでも気軽に楽しまれる様になりました。
文明の発展に感謝です!
さて、18世紀ヨーロッパの紅茶社会に思いを巡らすと、現代の消費者社会にも重なるところがありますね。実はそんなに美味しくないものも、世の中が、もてはやすから価値が生まれてくるのです。そこにあつまる人々は情報を味わいます。
なんて、そんな事を書いている私もどちらかと言うとミーハーな部類です…
情報に踊らされるのも悪くないでしょう、そこから新しく美味しいものが生まれるであれば。
A bientôt 😉 !!
友人宅にて。お手製キャロットケーキとバナナケーキ、セントクリストファーのイングリッシュブレックファーストをミルクティーで
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