「シュルレアリスムの発明」展(L’Invention du surréalisme)@フランス国立図書館
- 2021/06/07
- フランス生活
ボンジュール、パリマセのたーしーです。昨秋ぶりに文化施設の再開が認められ、パリでも美術館や劇場を楽しんでいる人がたくさんいると思います。以前書いたようにこれだけ行きたい美術館があったのですが、なかには confinement 中に終わってしまった企画もあり、非常に残念でした……。
それでも文化施設の再開は嬉しいことで、先日、ようやく開催されたフランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France, 通称 BnF)での企画展を見てきました。その企画の名は、「シュルレアリスムの発明」(L’Invention du surréalisme)。その日のことをメモ代わりにブログ記事にしてみました。
「シュルレアリスムの発明」展(L’Invention du surréalisme)について
2020年に開催されるはずだった「シュルレアリスムの発明」展
2020年は「最初のシュルレアリスム作品」(ブルトン)である『磁場』(Les Champs magnétiques)が出てからちょうど百周年。ということでシュルレアリスムに関する多数のイベントが、もともと企画されていました。
しかしながら、新型コロナウイルスの影響で軒並み中止に。フランス国立図書館で開催予定だった「シュルレアリスムの発明」展も、当然延期になっていました。
そんな「シュルレアリスムの発明」展ですが、商店の入り口や駅ナカ等、街のいたるところでポスターを見かけるなど、企画展の告知にも多かれ少なかれ力が入れられているようでした。
ちなみに日本でいちはやく「シュルレアリスムの発明」展について触れてくれているのは、図書新聞の次の評だと思います。
http://toshoshimbun.jp/books_newspaper/week_description.php?shinbunno=3487&syosekino=14620
会期、場所、チケット代
会期、場所、チケット代等の情報は以下の通り。より詳しい情報は、フランス国立図書館のサイトをご覧ください 🙂
https://www.bnf.fr/fr/agenda/linvention-du-surrealisme-des-champs-magnetiques-nadja
会期
2021年5月19日〜8月14日まで。
開館時間
火曜日〜土曜日 10時〜19時、。
日曜日 13時〜19時。
月曜定休。
場所
Bibliothèque François-Mitterrand Quai François Mauriac, 75706 Paris Cedex 13
チケット代
9ユーロ ※BnFのカードを持っている方は割引等あり
「シュルレアリスムの発明」展(L’Invention du surréalisme)の構成
サブタイトルに「『磁場』から『ナジャ』へ」(Des Champs magnétiques à Nadja)とあるように、今回の企画展ではシュルレアリスムの誕生(と、その前夜)から20年代末までを振り返るという狙いがあるようでした。
そんな「シュルレアリスムの発明」展の企画構成は、大きく次のように分かれていました。
1,『パラード』等、1910年代の前衛芸術振り返り
まず、シュルレアリスムの発明前夜として1910年代の前衛芸術について触れられていました。ピエール・アルベール=ビローの絵画に、ディアギレフ、コクトー、サティ、ピカソらが参加した有名な『パラード』の馬の衣装等が展示されていました。詩で言えば、アポリネールの『アルコール』の Éditions originales や草稿が展示されていました。
Ô bouches l’homme est à la recherche d’un nouveau langage / Auquel le grammairien d’aucune langue n’aura rien à dire
おお口よ 人は新しい言語を探している / それに対していかなる言語の文法家も何も言うことのない言語を
というアポリネールの「勝利」という詩の引用が壁に書かれているのが非常に印象的でした。
2,『リテラチュール』
次に、『リテラチュール』誌についてのコーナーがあります。このコーナーに入るとすぐ、1924年の『シュルレアリスム宣言』でシュルレアリストだと認められた人物たちの肖像が、壁一面に大きく並べられているのに注目せざるをえないでしょう。「ランボーは生の実践とその他においてシュルレアリストだ」「ヴァシェは私の中でシュルレアリストだ」というあれです。
見どころとしては、なんといっても手紙類です。アラゴン、ブルトン、スーポーらの直筆の手紙、ジャック・ヴァシェからの彼ら宛の手紙、それからブルトン、アラゴンのコラージュの手紙などがありました。
その他、ロベール・デスノス作の「(作家・詩人の)理想的な墓地」の図デッサンもあり、興味深かったです。
また、先の図書新聞でも取り上げられていた「エリュタレティル」 « Erutaréttil » (フランス語の « Littérature » を逆から読んだもの)の手書きの版下もこのコーナーで読むことができます。
3,ダダ
3つ目のコーナーでは、ダダが特集されています。チューリッヒで発行された『ダダ』の雑誌はもちろん、ニューヨーク(デュシャン、アルチュール・クラヴァン)やバルセロナ(フランシス・ピカビア)の活動も取り上げられていました。マン・レイの写真もいくつかありました。
さらにポンピドゥ・センターに所蔵されている、マルセル・ヤンコ作のトリスタン・ツァラのポートレートのオブジェも展示されていました。
4,オートマティスム
4つ目のコーナーから、シュルレアリスムの黎明期に入ります。このコーナーは『磁場』、「コラージュ」、そして「夢と眠り」の3つのセクションに分かれていました。
『磁場』
本企画の目玉のひとつとも言える『磁場』の草稿が展示されていました。ファクシミリ版もありますが、せっかくなので、その場でじっくり読みたくなりましたね。
コラージュ
新聞や雑誌を切り抜き、カイエに貼り付けて作られたアラゴンのコラージュ作品等が展示されていました。
またコラージュなのかはびみょうなところですが、1922年に発表された、スーポーとソニア・ドローネーの共同作品『風の上で』 « Sur le vent » というタピスリー=ポエムは圧巻でした。これはぜひ現地でみてみてほしいです。同じような試みをして、いつか家に飾りたい。
それから「優美な屍骸」 « cadavre exquis » の作品もいくつかありました。
夢と眠り
睡眠実験の手記やデッサンが展示されていました。たとえば、ロベール・デスノスのものがありました。
マックス・エルンストの『百頭女』のデッサンや、その美しい装丁版も必見でしょう。
5,マニフェスト、プロヴォカシオン
ここからはダダやシュルレアリスムのマニフェストや挑戦的な態度に焦点が当てられていました。そういった要素と多かれ少なかれ関連しているであろうタイポグラフィーについての展示物が印象的で、とりわけ « Une Nuit d’échecs gras » の手書きの版下が見られたのが嬉しかったです。すごかった。
また、ダダやシュルレアリスムのビラ(papillon)も展示されていました。シュルレアリスムのビラに関しては、それの複製が壁一面に貼り付けられていました。
6,ナジャ
最後のコーナーは『ナジャ』について。「ナジャ」からの手紙や、『ナジャ』に関わるデッサン資料が展示されていました。巖谷國士訳の岩波文庫版のカバー写真としてよく知られたデッサンも展示されていました。
おまけ Groupe de Nantes について
パリのフランス国立図書館とあわせて、ナント市立図書館でも「シュルレアリスムの発明」にまつわる企画をしているようです。(付け加えておくと、これに関しては、文化施設の再開以前からネットで部分的に資料の閲覧ができました。)
なぜナントなのかと言えば、1916年にブルトンがジャック・ヴァシェと出会ったのがナントの病院だったからですね。バンジャマン・ペレ、ジャック・バロン、クロード・カーアンのようなシュルレアリスムのグループのなかで欠かせない人物もナントに縁があります。
「シュルレアリスムの発明」展(L’Invention du surréalisme) まとめ
いかがだったでしょうか。エクスポについて紹介しようと思ったのですが、どうしてもざっくりとした感想にしかなりませんでした。
百聞は一見にしかずということで、少しでも気になった方はぜひフランス国立図書館で「シュルレアリスムの発明」展を見てみてください 🙂
私も会期中にもう何度か行ってみようと思います。その際はこの記事に感想を付け加えますね。
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