【コロナ】フランスで考えるワクチンと各国の社会・政治関係のこと
- 2021/03/23
- フランス生活
ボンジュール、パリパリマセマセのたーしーです。ふと、ワクチンと各国の社会的・政治関係についてフランスから考えてみました。肝心のフランスはほとんど出てこず、ラテンアメリカの話ですが……。
ワクチン接種世界一のチリ、それでも感染拡大
今朝、興味深い記事を読みました。現在ワクチン接種が世界一進んでいるチリで、新型コロナウイルスの感染が拡大しているという朝日新聞の記事です。
接種世界一なのに感染拡大のチリ ワクチンが遠因?
https://www.asahi.com/articles/ASP3M7WZXP3MUHBI00V.html
タイトルだけ読むと「え、ワクチンが遠因ってことは……。ワクチンを接種したらコロナに感染するの?」と勘違いしてしまうかもしれませんが、そうではありませんので注意。ワクチンを接種するだけで新型コロナウイルスの恐怖から解放されたと錯覚し、人々は気の緩みに拍車をかかったのではないかと専門家から指摘されているとのことでした。
なるほど、面白いですね。まぁどこかの国ではワクチン接種がチリほど進んでいないにもかかわらず、暖かくなってきたことによる解放ムードがありますが……。(三度目の Confinement、うまくいくのだろうか)
コロナ禍のラテンアメリカにおけるワクチン事情
アメリカ産のワクチンが全然ない、という不思議
ところで、たまたま昨日友人と電話していて、その時にラテンアメリカ地域の新型コロナウイルスの状況、ワクチン事情について教えてもらいました。彼によると、
- チリをはじめとする南米で接種されているワクチンのほとんどはロシア産か中国産のもの
- アメリカ産のワクチンは全然ない
とのことでした。ラテンアメリカ地域に、アメリカ(アメリカ合衆国)のワクチンがないというのは意外なことでした。
そもそもラテンアメリカ地域とアメリカ合衆国は歴史的にかなり根深い関係があります。それは19世紀末以来のアメリカ合衆国における帝国主義の問題とかかわっていると言えるかもしれません。
あるいはキューバ革命(1959年)以降もなお続いた、親米的な政権を支援する目的での、アメリカ合衆国のラテンアメリカ地域への直接的な介入が関係があるといえるかもしれません。たとえばそれは経済支援という形でしたし、チリ軍部クーデター(1973年)でした。
しかしながら新自由主義的な経済活動による富めるものと貧しいものの間の格差の拡大は、20世紀の終わりからラテンアメリカ地域における反米感情を高めました。こういう背景を踏まえると、アメリカ合衆国はラテンアメリカ地域への影響力を取り戻したいのではないかと考えられます。
先ほどリンクを掲載した朝日新聞の記事にも書かれていますが、チリは親米政権。それにもかかわらず、チリをはじめとするラテンアメリカ諸国はアメリカからワクチンを調達できない。これはおかしい。昨日話した友人もそう主張していました。
ワクチンが変えうる社会的・政治的国際関係
閑話休題。ここで話題にしたいのは、ロシア産のワクチン、中国産のワクチン、アメリカ産のワクチン、あるいは欧州産のワクチンの効き目がどうこうということではありません。そもそも専門家でない私にそんなことを考える力はありませんし。(一つの話題として、ちょうど今はアストラゼネカのワクチンがどうなるのか気になりますが)
そうではなく、どこの国のワクチンを使うことができたかという点は、コロナ禍後の政治・社会情勢に大きく影響しそうだなということです。
どういうことか。たとえば新型コロナウイルスの脅威におびえている時に、中国産のワクチンを接種できたとしましょう。これによってひとまずウイルスに対しての免疫を獲得することができたとすると、ワクチンを提供してくれた国への感謝の気持ちが忘れられることはないのではないでしょうか。
他方、それまで友好関係にあった国でも、新型コロナウイルスのワクチンの調達時のやり取り(いざこざ等)をめぐって、コロナ禍後に、禍根が残される可能性があるのではないかと思われます。そして、それまでの社会的・政治的な国際関係が変形していくのではないかと考えられます。
ワクチン接種問題は、単なる衛生学的な問題ではない
そうはいってもこれは非常に難しい、繊細な問題です。国家としてはまず国民を、という判断も十分にありえるものでしょう。役割に応じて、という判断だってありえるでしょうし、まずは弱き者からという判断だってありえます。いずれにせよ、一つの答えなどないわけです。
しかしそれにもかかわらず、私たちの感情のレベルで、先に述べたような出来事を引き起こす可能性や、恨みつらみが残ってしまう可能性があるのは恐ろしいことです。このブログ記事を書いている私だって、その時、ワクチンを接種し後にどのような気持ちでいるだろうか予想もつきません。
こんなブログ記事を書いた理由は、新型コロナウイルスのワクチン接種問題は、単に衛生学的な問題ではないんだなと友人と話していて思ったからです。それだけでなく、社会的・政治的な駆け引きになっていくのでしょう(いや、もうずっと前からそのような駆け引きははじまっているのでしょう)。そしてワクチンをめぐる国家間のやり取りは、私たちの未来に大きな影響を与えることになるでしょう。願わくば、それが大きな災いをもたらすことなどありませんように……。
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