【完全版】『かぐや様は告らせたい』第四話のフランス語シーンのセリフを翻訳し解説する

【完全版】『かぐや様は告らせたい』第四話のフランス語シーンのセリフを翻訳し解説する

ボンジュール、パリパリマセマセのたーしーです。先日『かぐや様は告らせたい』のフランス語について書きましたが、同アニメ版で、別のフランス語シーンがあるとという話を耳にしました。そのシーンとは、

フランス校の生徒会副会長であるベルトワーズ・ベツィが、白銀にフランス語で暴言を吐いている → それを聞いたかぐやさんがベツィにフランス語で言い返す

と言う流れのようです。

ここ、漫画だと記号表現なのですが、アニメ版4話のBパートでは実際にフランス語を喋っているらしい。私はアニメ版を見たことがないのでわからないのですが……orz(みないと!)

気になったのでググってみると、この部分のフランス語原文(らしきもの?)が落ちていました。

しかしそれを読んでみると、どうもフランス語の日本語翻訳は部分的で、完訳ではないようなんですよね。具体的には、三分の一ほどのフランス語のセリフが、まったく手つかずで残っています。ヤフー知恵袋やブログに掲載されているものも同様、完訳されているものは見つかりませんでした。それと、オヤっと思う訳文が多少ありました。

ですので、半分自己満でパリマセがやってみました。これをきっかけにフランス語に興味を持ってくれる方が増えたらいいなということで、表現の解説もしてみました。もちろん間違いがあると思うので、その場合はご遠慮無く指摘してください!!

『かぐや様は告らせたい』第四話のフランス語シーンのセリフ フランス語

Que viens-tu de dire à mon propos petite salope ? Je te laisserai savoir que j’ai gradué en premier de classe dans les Navy Seals et j’ai eu ma part dans de nombreux raids secrets sur Al-Qaïda ; j’ai plus de 300 morts confirmées. J’ai été entraîné dans l’art de guerre guérilla, et je suis le meilleur snipper de l’entière armée des États-Unis. Tu n’es rien pour moi sinon qu’une autre cible. Je vais t’annihiler avec une précision inédite sur cette Terre ; note mes putains de mots. Tu penses que tu peux te tirer d’avoir dit de la merde sur moi sur le net ? Penses-y encore que je contacte ma guilde d’espion à travers les États-Unis et ton adresse IP se fait tracer alors t’es mieux de te préparer pour la tempête avorton. La tempête qui balayera la misérable chose que tu appelles ta vie. T’es morte gamine. Je puis être n’importe où n’importe quand et de [te] tuer de 700 manières différentes, et ce seulement de mes mains. Non seulement suis-je un expert du combat à mains nues mais j’ai aussi l’entier arsenal du corps des marines à ma disposition //ここから日本語訳なし// et je compte bien l’utiliser à son plein potentiel afin d’oblitérer ta misérable face du continent, petite merde. Si seulement tu avais pu prévoir quelle divine rétribution amènerais ton « petit » commentaire, peut-être aurais tu retenu ta langue. Mais tu ne pouvais pas ; tu  ne l’as pas fait, et maintenant tu en paies le prix petit taré. Je vais régurgiter ma fureur sur toi et tu vas te noyer dedans. T’es morte gamine.

まず「かぐや様は告らせたい フランス語」と検索して拾ったフランス語画像を元につくった原文です。

この内、赤マーカーを引いた箇所の日本語訳は調べた限りどこにもありませんでした。また、ググると出てくるフランス語文の画像ですが、フランス語の打ち間違いが見られましたので、間違っていた箇所は修正しています。たとえば、”700 manières différentes” は複数形になるのに [s] が抜け落ちていたり、”potentiel” という単語を “potential” と打ち間違えていたり、”l’utiliser” が “l’utilisé” となっていたり、等々。

『かぐや様は告らせたい』第四話のフランス語シーンのセリフ 日本語訳と解説

ここからは二、三文ずつ読み、フランス語表現と文法を解説していきます。黄色マーカーした部分は表現・文法の解説をしています

次第にヒートアップしていくフランス語の罵倒

Navy SEALs(ネイビーシールズ)首席の四宮かぐや

Que viens-tu de dire à mon propos petite salope ? Je te laisserai savoir que j’ai gradué en premier de classe dans les Navy Seals et j’ai eu ma part dans de nombreux raids secrets sur Al-Qaïda ; j’ai plus de 300 morts confirmées.

あんた今なんて言ったの? いちおう教えておくけど、私、Navy Seals を首席(en premier de classe )で卒業したし、アルカイダ隠密襲撃にも参加したのよね。300人は葬ったわ。

一文目の Que viens tu de dire… は「今なんて言ったのか」の意味。venir de inf. という表現は近い過去を表し「〜したばかり」「今〜したところ」みたいに訳せます。直後の Je te laisserai は ferai でもいいのかもしれません。

二文目の en premier de classe は「一番」という意味。「最初に」と訳している方もいるようですが、ネイビーシールズを卒業したという文脈なので、「首席」が適当ではないでしょうか。

「アメリカ軍の中で最高のスナイパー」ってどう言う?

J’ai été entraîné dans l’art de guerre guérilla, et je suis le meilleur snipper de l’entière armée des États-Unis. Tu n’es rien pour moi sinon qu’une autre cible. Je vais t’annihiler avec une précision inédite sur cette Terre ; note mes putains de mots.

ゲリラ戦の技術も身につけたし、それにアメリカ軍の中で最高のスナイパーなの、私。あんたなんか次のターゲットくらいでしかないから。この地球上でかつてないほど正確にあんたを無に帰してあげるわ。

le meilleur snipper は「最高のスナイパー」。le meilleur は「一番良い」の意味で、英語の best にあたります。

2つ目の文章の Tu n’es rien pour moi sinon qu’une autre cible. は「あんたなんか次のターゲットくらいでしかないから」と訳しましたが、ne rien que… というのが「…以外の何ものでもない」という表現です。

avec une précision は形容詞を伴い、「…なくらい正確に」の意味。ここでは inédit 「かつて無いほど」を伴っています。

ちなみに、note mes putains de mots は訳しませんでした。汚い表現だと思ってください

脅し文句、罵倒の連続……

Tu penses que tu peux te tirer d’avoir dit de la merde sur moi sur le net ? Penses-y encore que je contacte ma guilde d’espion à travers les États-Unis et ton adresse IP se fait tracer alors t’es mieux de te préparer pour la tempête avorton. La tempête qui balayera la misérable chose que tu appelles ta vie. T’es morte gamine. Je puis être n’importe où n’importe quand et de [te] tuer de 700 manières différentes, et ce seulement de mes mains.

ネットにクソみたいな私への悪口を書いたらやり過ごせると思う? するといいわ、私はアメリカ中にいるスパイ仲間に連絡して、あんたのIPアドレスが追跡されちゃうけど。だからあんたは覚悟しておいたほうがいいわ、このドチビが。その大混乱が、あんたの人生という惨めのものを履き捨ててくれるんだけどね。もう終わりなのよ、お嬢ちゃん。私は好きなときにどこでも行けるし、700通りのやり方であんたを始末できるの、ただの私の両手だけでね。

この辺から悪口も加速し、罵り言葉が増えて行きます……!

Tu penses que… は「…だと思う」の意味です。ここでは tu peux te tirer d’avoir dit de la merde sur moi 「私への悪口を書いてやり過ごす」ことが tu peux 「できる」のかと問うているわけです。もちろん、Non を想定しているので反語的な言い方と言えるかもしれません。sur le net 「ネットに」ということかと思います、これでも通じると思いますが、 sur Internet のほうがよく聞く気しました。

細かいことを言うと、d’avoir dit は過去形(複合過去)なので、すでに悪口をネット上で書いたことになるのかなと。それとも「〜した結果」を示すので、前未来(futur antérieur)のようになるのだろうか(なんか変な気がするけど)。この点はあらためて文法書を読み調べてみないと。

面白いなと思ったのは、t’es mieux de te préparer pour la tempête という箇所。la tempête は「嵐、暴風雨」の意味で使われるのが多いですが、ここではそこから転じて「動乱、大荒れ」みたいな意味で使われています。文字通り訳すと「嵐=大荒れに備えておくほうがいい」という文を、「覚悟していたほうがいい」としてみました。

Je puis être の puis は pouvoir の一人称単数の文語的な言い方。フランスに着いたばかりのとき “Puis-je… ?” 「〜してもいいですか」と言っていたら「今どきそんな文人っぽい言い方しないよ〜」と言われました。そういう風に聞こえることを知らなかったのです。今は、わざと puis を使って気取っています(笑)

ちなみに、ベツィは女性なので T’es morte gamine と言っていますが、もし男性相手なら T’es mort gamin となります

かぐや様のフランス語セリフで日本語訳のなかった箇所

「○○するつもり」の内容が怖い

Non seulement suis-je un expert du combat à mains nues mais j’ai aussi l’entier arsenal du corps des marines à ma disposition //ここから日本語訳なし// et je compte bien l’utiliser à son plein potentiel afin d’oblitérer ta misérable face du continent, petite merde.

私はただの素手ごろの達人というわけではなく、アメリカの海軍の兵器全部も好きなように使えるから。しかも最大限のポテンシャルを発揮して使うつもり、あんたのみみっちい顔面を消し去るためにね、可愛いクソッタレちゃん。

ここから、日本語訳の見つからなかった箇所を含めて訳しています

Non seulement A mais (aussi) B は「AだけでなくBも」の意味です。

à ma disposition は à la disposition de qn. の形で「〜の意のままに、自由に」の意味。restant à votre entière disposition という定形表現でよく使います。

je compter bien l’utiliser は「 それ[=アメリカの海軍の兵器全部]を使うつもり」の意味。compter + inf. 「〜するつもり」は非常によく使う言い回しなので覚えておいて損はないはずです。前置詞は不要なので注意

“petit” の使い方がフランス人っぽい

Si seulement tu avais pu prévoir quelle divine rétribution amènerait ton « petit » commentaire, peut-être aurais tu retenu ta langue. Mais tu ne pouvais pas ; tu  ne l’as pas fait, et maintenant tu en paies le prix petit, taré. Je vais régurgiter ma fureur sur toi et tu vas te noyer dedans. T’es morte gamine.

もし単にあんたがすごくいい報酬のために「可愛い」コメントをしたって言うなら、何も言わない方が良かっただろうに。でもできなかったのよね。そうしなかったから、報復を受けているわけものね、お馬鹿さん。私は怒りを吐き出すから、あなたはそこで溺れてね。もうおしまいなのよ、お嬢ちゃん。

ようやく最後です。一文目は元画像の文がおかしかったので(”Si seulement tu avais pu prévoir qu’elle divin rétribution amènerais ton « petit » commentaire” が元の文で、elle divin rétribution の意味が通らず、conjugaison も間違っている)、意味の通る文を推測して再構成してみて意訳してみました。しかしそれでも完全に理解できていません。一度アニメを見てから書き直しが必要です。

Si seulement… は「もしただ、単に〜」の条件節。ここでは条件法と一緒に使われ、非現実(iréel)「Aだったら、Bだったのに」を表しています。その後に、Mais tu ne pouvais pas 「でもできなかったのよね」と、現実ではこうなった(=悪口を言ってしまった)と説明しているので、大意は合っていると思います。

ここで、”petit” が付けられているのは皮肉か、ユーモアですね。実際は「ちょっとでも、可愛くもない」のに、わざと、反対のことを言っているのです。フランス人はこういう言い回しが大好きです。

また、peut-être aurais tu retenu ta langue の部分は直訳すると「おそらく舌=言語を出さないでおく」になるので、「何も言わないほうがいい」としました。 peut-être 「たぶん、おそらく」という副詞の直後なので、続く文章は倒置(inversion)しています。

完成!『かぐや様は告らせたい』第四話のフランス語シーンのセリフ 日本語訳

あんた今なんて言ったの? いちおう教えておくけど、私、Navy Seals を首席(en premier de classe )で卒業したし、アルカイダ隠密襲撃にも参加したのよね。300人は葬ったわ。ゲリラ戦の技術も身につけたし、それにアメリカ軍の中で最高のスナイパーなの、私。あんたなんか次のターゲットくらいでしかないから。この地球上でかつてないほど正確にあんたを無に帰してあげるわ。ネットにクソみたいな私への悪口を書いたらやり過ごせると思う? するといいわ、私はアメリカ中にいるスパイ仲間に連絡して、あんたのIPアドレスが追跡されちゃうけど。だからあんたは覚悟しておいたほうがいいわ、このドチビが。その大混乱が、あんたの人生という惨めのものを履き捨ててくれるんだけどね。もう終わりなのよ、お嬢ちゃん。私は好きなときにどこでも行けるし、700通りのやり方であんたを始末できるの、ただの私の両手だけでね。私はただの素手ごろの達人というわけではなく、アメリカの海軍の兵器全部も好きなように使えるから。しかも最大限のポテンシャルを発揮して使うつもり、あんたのみみっちい顔面を消し去るためにね、可愛いクソッタレちゃん。もし単にあんたがすごくいい報酬のために「可愛い」コメントをしたって言うなら、何も言わない方が良かっただろうに。でもできなかったのよね。そうしなかったから、報復を受けているわけものね、お馬鹿さん。私は怒りを吐き出すから、あなたはそこで溺れてね。もうおしまいなのよ、お嬢ちゃん。

というわけで、『かぐや様は告らせたい』第四話のフランス語シーンのセリフを翻訳するとこうなります。

フランス語の悪口について

今回は悪口というか、汚い言葉がよく出てきました。こういう言葉を私は普段使わないので勉強になりました。

Punaise, mercredi, purée くらいですかね。どんな言葉も知っておくに越したことはないし、知らなければならないでしょう。実際、こういう言い回しから外国語学習は思いますし。日本語を学んでくれている友人もそう言っていました

でも汚い言葉は、何の言語でも、個人的には好きじゃないのであまり使いたくないですね。でも覚えるのは嫌いじゃないです(笑)

おわりに

今回『かぐや様は告らせたい』というアニメのワンシーンを例に、フランス語の表現を確認していきました。「そうは言っても、日本語のコンテンツだし、フランス語はおまけじゃん」とか「読者 (視聴者、それから作者もかも) はそこまでフランス語訳の厳密さを求めていないよ」という意見もあるでしょう。

でも、私はこういう細かさって意外と大事だと思うんです。たとえば逆の立場、日本語が海外コンテンツで使われていたとき、「こういう意味じゃないかな」「これってこういう言い回しのほうがいいんじゃないかな」と口を挟みたくなる時ってありませんか。外国語の場合、意味をナァナァにしていても意外と文脈で言いたいことがわかるものです。しかしそこにちょっとした誤解や勘違いがあった場合、どうでしょう。気がついてときにはその誤解が大きく膨らんでいて、取り返しのつかない間違いになってしまうなんてこともあるかもしれません。

フェイクニュースの時代を生きる私たちこそ、速さと便利さに逆らって、ゆっくりじっくり言葉について考えてみる必要があるのかなと考えています。