ラ・ファム「もしいつか」(La femme, “Si un jour”)〜フランス語の歌詞を読み解釈する〜

ラ・ファム「もしいつか」(La femme, “Si un jour”)〜フランス語の歌詞を読み解釈する〜

ボンジュール、パリパリマセマセのたーしーです。

フランス語の音楽紹介、歌詞を読んでみようのコーナーの更新です。今日は、ラ・ファム「もしいつか」(La femme, “Si un jour”)という曲を紹介します。短いけれど、男性・女性について考えさせられる深い内容です。解釈に入る前に、まずはフランス語の歌詞を読んでみましょう。

ラ・ファム「もしいつか」(La femme, “Si un jour”) 歌詞原文と試訳

ラ・ファム「もしいつか」(La femme, “Si un jour”) 歌詞原文引用

(couplet 1)

Mon père me dit remets donc ton jupon

Ne touche pas à c’ballon ça c’est pour les garçons

Cesse de gémir t’as des occupations

Des fils et des aiguilles des perles et des boutons

 

(refrain)

Mais moi j’aimerais vraiment pouvoir abandonner mon Moulinex

Devenir unisexe

Pour savoir cracher

Fumer toute la journée

Marcher tout en sifflant

Porter des pantalons

 

(couplet 2)

Maintenant je vis je suis comme un garçon

Je porte un gros blouson de cuir, un ceinturon

Mais il ne faut pas m’approcher quand je sors ma Harley

À celui qui m’approche je lui fous une raclée

 

(refrain)

Mais moi j’aimerais vraiment pouvoir abandonner mon Moulinex

Devenir unisexe

Pour savoir cracher

Fumer toute la journée

Marcher tout en sifflant

Porter des pantalons

ラ・ファム「もしいつか」(La femme, “Si un jour”) 歌詞試訳

父親は言うんだ ペティコートをまた履けって

そのボールは男の子のだからさわるなって

ウダウダ言うなって お前は忙しいんだからって

ビーズやボタンをお裁縫するのに

 

でも私は本当にムリネックスを捨てられたら良いなって思ってるの

ユニセックスになれたらなって

唾をペッと吐けるようになるためにね

一日中タバコをふかせたらなって

口笛を吹いて歩いたり

ズボンを吐けたらいいなって

 

今では私は男の子のように暮らしてる

おっきな革ジャンを着て 軍用ベルトをつけるの

でもハーレーででかけてるときに近寄ってこないでね

近寄ってくるやつはボコボコにしちゃうから

 

でも私は本当にムリネックスを捨てられたら良いなって思ってるの

ユニセックスになれたらなって

唾をペッと吐けるようになるためにね

一日中タバコをふかせたらなって

口笛を吹いて歩いたり

ズボンを吐けたらいいなって

 

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ラ・ファム「もしいつか」(La femme, “Si un jour”) 解釈

女性らしさ、男性らしさとは何か

ラ・ファムは2010年に結成、2013年にアルバム『Psycho Tropical Berlin』でデビューしたフランスのバンドとのこと。サーフ、ニューウェイブ、ロックにエレクトロと多種多様なジャンルに跨ったサウンドが楽しいです。今のフランスでかなり人気のあるグループです。

今回の「もしいつか」(La femme, “Si un jour”)は、女性の語り手が、自分のアイデンティティについて歌っているようです。父親は女性らしく振る舞えというけれど、私はそうしたくない! という内容になっているかと思います。一種の女性解放に与するのかなと考えられるので、そういう意味でも今どきだなと思います。

ただ、「今どき」といったものの、女性とか男性とか性に縛られたくないという内容の歌は古くからあります。ポップソングでは、たとえばフランス・ギャルの「天使のためいき」(France Gall, “Nous ne sommes pas des anges”)などを思い出しますね。60年代から既に50年以上が経ちましたが、私たちの考えはどれほど変わったのでしょうか。 “Si un jour” というタイトルが示すように、まだまだ時間がかかるのかなとも思いますが。

歌詞に出てくるムリネックスって何?

ところで、リフレインのところに「ムリネックス」(Moulinex)と出てきますが、これは料理器具の老舗ブランドのこと。調理用万能ミキサー等を売っています。「ムリネックスを捨てられたら良いなって思っている」(j’aimerais vraiment pouvoir abandonner mon Moulinex)というフレーズは、料理=女性という古びた考えへの反発と言えるでしょう

“Moulinex” という語は、直後におかれた “unisexe” と脚韻する上での有効ですね