【パリ】2019年12月5日からのRATPのストライキについて
- 2019/11/10
- フランス生活
Bonjour à toutes et à tous. こんにちは、パリパリマセマセのたーしーです。今日のエントリは旅行者、在住者の生活に大きく関係するであろうニュースについてです。
一週間ほど前、その見出しを眼にするやいなや、私たちは大きなショックを受けました。
Grève RATP du 5 décembre : y aura-t-il «zéro métro, zéro RER»?
〔12月5日からRATPストライキ:「ゼロ・メトロ(地下鉄)、ゼロRER(近郊高速鉄道)」になるのだろうか?〕
http://www.leparisien.fr/info-paris-ile-de-france-oise/transports/greve-ratp-du-5-decembre-y-aura-t-il-zero-metro-zero-rer-01-11-2019-8184537.php
これは、Le Parisien 誌(ウェブ版 )の記事見出しです。RATPとは、パリ交通公団のこと(以下、RATP)。つまり、パリの交通網を取り仕切る団体がストライキをすることで、2019年12月5日以降、それが麻痺することが予想されるということです。場合によっては年明けの2020年1月にも食い込む可能性があるとのことです。パリ在住者はもちろん、年末年始のヴァカンスにパリやフランスへの旅行を予定されている人は、このニュースに大きな不安を抱えているのではないでしょうか。今回は、更新時現在(2019年11月10日)でざっと調べた限りの情報をまとめてみましたので、今後の予定のご参考程度に共有します。
RATP(パリのメトロ、RER(近郊高速鉄道)、路面電車)のストライキの原因
ストライキの原因はフランスの年金制度改革
今回のストライキの原因は、エマニュエル・マクロン大統領の年金制度改革にあります。この年金制度改革によると、これまで職業別に多数存在していた個別の年金制度が廃止され、統一年金制度の導入が計画されています。12月5日からのストライキを予定しているRATPは、この年金制度改革に反対しており、9月半ばにもストライキが実施されました。通常よりも過酷な条件で働かねばならない地下鉄職員らは(夜間の労働義務、土日祝日の労働義務、空気の悪い地下環境での労働義務等)早期退職の権利が認められております。 たとえば仏会計院(Cour des Comptes)によると、国内の労働者の大半は63歳で退職する一方、RATP職員の平均退職年齢は2017年時で55.7歳だったとのことです(https://www.afpbb.com/articles/-/3244400)。この権利の剥奪を認めない、というのがストライキの強い動機となっているようです。
RATP〔メトロ(地下鉄)、RER(近郊高速鉄道)路面電車、バス〕の止まる範囲、期間
こうなると気になるのは、「通勤や通学はどうするのか」「旅行の予定を組んだのにどうなるのか」という点です。
RATPが管轄しているのはメトロ(地下鉄)、RER(近郊高速鉄道)路面電車、バスなので、2019年12月5日以降、無期限にこれらが止まることが見込まれます。サイトの情報によると、年明け2020年1月にもストライキは継続される可能性もあるとのことです。したがってこの期間、パリ市内全域および近郊での移動のためには別の移動手段を使うことを余儀なくされることでしょう。
これらの公共交通機関を除くと、パリには、Vélib’ に代表される貸自転車、Lime 等の貸キックボード、Uber 等のタクシーなどが機能しているため、RATP管轄でないこれらのサービスの利用が、代替の移動手段として現状望ましいのではないかと考えられます。
SNCF(パリ国有鉄道)はどうなるのか
さて、RATPのストライキの関係でパリおよびその近郊の移動が困難になるであろうことが予想されますが、もう一つ気になるのは「パリ以外の街の交通網はどうなるのか」「フランス全土を巻き込むストライキなのか」という点ではないでしょうか。たとえば次のサイトを読むと以下のように書かれています。
SNCF(パリ国有鉄道、以下SNCF)の利用者もまた混乱に巻き込まれることが見込まれるでしょう。たとえばTGV、TER、Intercité、Ouigo等の交通網において少なくともローヌ・アルプ、フランシュ・コンテ、ブルターニュ、ノルマンディ、コート・ダジュール等を含む13の地域に関わると予想されます。
http://www.francesoir.fr/societe-transport/greve-du-5-decembre-les-previsions-de-trafic-la-ratp-et-la-sncf
また別のサイトではSNCFのストライキを呼びかける声も確認されるようです。
Le syndicat SUD-Rail appelle les agents de la SNCF à démarrer une grève illimitée dans toute la France à partir du jeudi 5 décembre 2019.
〔労働組合「シュド・ライユ」はSNCFに関わる者たちに、2019年12月5日以降の、フランス全土での無期限ストライキの開始を呼びかけています。〕
https://www.cestlagreve.fr/greve/sncf-decembre-2019/
このように書かれているため、SNCFもまた、RATP同様にストライキに関わるかもしれません。「連帯、統一、民主主義」を意味する団体名があらわすように、年金制度改革に一致団結して強い反対を示す可能性高いのではないのではないでしょうか。そうなると何が予想されるか。それは、フランス全土の電車交通網が麻痺するだろうということです。たとえばパリからリヨンに移動したり、リヨンからマルセイユに移動したりということがより困難になってしまうかもしれません。SNCFの場合も無期限ストライキと銘打っているため、クリスマスのヴァカンスや、年明けまでストライキが食い込む可能性が否めません。これは、年末年始の予定を組む際に大きな困難を私たちにもたらすでしょう。
シャルル・ド・ゴール空港利用者は要注意
RATP管轄のRER B線、ロワシーバスは動かない可能性有
シャルル・ド・ゴール空港へ向かう場合、多くの人が利用するRER B線(電車)、ロワシーバスは両方ともRATP管轄です。そのため、ストライキの影響をもろに受け、運行していない可能性があります。その場合、どうやってシャルル・ド・ゴール空港まで行けるのでしょうか。
空港へ向かう方はLe bus direct(ル・ビュス・ディレクト)の利用を
「ル・ビュス・ディレクト」とはもともと「エールフランス・バス」として知られていたもので、シャルル・ド・ゴール空港からパリ市内(シャンゼリゼやモンパルナス等の移動)、またはその逆のために利用可能です。このサービスは、RATPとは別管轄のため、件のストライキの影響を受けないであろうと思われます(今後別除法を見つけたら追記します)。チケットの購入方法は別ブログでたくさん説明されているので、以下に値段だけ書いておきます。
Le bus direct(ル・ビュス・ディレクト)の値段
- 大人 : 12.00 €/枚
- 子供(4-11歳) : 7.00 €
- 赤子(4歳未満) : 0.00 €
【追記】Uber 等の利用は値段に注意!
ただし、Uber に代表される VTC(Voiture de tourisme avec chauffeur,運転手付き観光車)は値段が通常より高くなる可能性があります。実際、9月13日のRATPストライキでは、通常の3倍にもなる場合もあったようです。
また、多くの人々が利用を試みるために何時間も待ちぼうけを食らう可能性もあります。もし可能であれば移動手段を事前に予約しておくことが望ましいでしょう。
その他のストライキやデモと重なる可能性
このRATPのメトロに関わるストライキに、その他のストライキが重なる可能性もあります。多くのストライキが重なることによってさらなる混乱が予想されます。現時点でわかっている情報をまとめておきます。このウェブ記事(仏語)を参考にしました。〔2019年11月22日現在〕
都市道路の交通手段のストライキ(旅行者、貨物等)
2019年12月5日より、労働組合が都市道路の交通に関わるストライキが予定されております。このストは、救急車の運転手や引越し業者、タクシー運転手にも関わるとのことです。
航空会社(エールフランス)のストライキ
2019年12月5日より、エールフランスもストを予定しております。ストに参加する場合、事前に自己申告が必要なようです。遅延やキャンセル等、最新情報は常にチェックするように心がけたいです。
弁護士のデモ
司法改革反対を受けた弁護士のデモ、通称 “journée de justice morte” (死せる司法の日)も2019年12月5日に行われる予定です。
警察のストライキ
2019年12月5日には警察のストライキも予定されております。「すべての警察サービスを対象に10時〜15時まで」と予定されているため、対象となる時間帯にはご注意ください。
電力会社のストライキ
「発電量を減らし、公共機関への電力供給をストップする(ただし病院等健康に関わる場所を除く)」という電力会社のストライキも予定されています。
教育機関のストライキ
教育機関に関わる3つの労働組合がストライキを予定しているとのことです。
病院(看護師)のストライキ
つい先日、医療に関わる予算の拡充・病院労働者へのボーナス支給についての「緊急プラン」が政府によって提示されたばかりですが、依然として看護師に代表される病院労働者は納得していないようです。したがって、12月5日にもストライキが決行される予定です。
学生たちのデモ
これも何週間か前に起こったのですが、リヨンの学食の前で自殺を図った困窮状態にあった学生の事件を受けたか “Précarité étudiante” のデモも12月5日に重なる可能性が高いです。
黄色いベストのデモ
昨年から続いており先週一周年を記念した黄色いベスト(Gilets jaunes)のデモも、この日行われることでしょう。11月16日にはイタリア広場を始めとしてかなり激しい暴動が確認されましたが、12月5日も同様の結果が訪れる可能性があります。「壊し屋」Casseurs に巻き込まれないよう十分注意しましょう(参考動画はこちら)。
まとめ
年末の忙しい時期にこのようなストライキがあると色々な次元に大きな影響があるのですが、他方、こういう場面でフランスという労働者の権利を大事にしようとする国家の力を痛感します。そうは言っても、旅行者にせよ、在住者にせよ、このストライキに巻き込まれるのは必至ですので、スケジュールに余裕をもって行動するのが良いでしょう。
これを機に改めて調べてみると1995年のゼネラル・ストライキによって交通網が4週間ほど麻痺したようですが、場合によってはそれに比すられるストライキになるかもしれません。今後の成り行きに注目したいです。
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